APJEプロジェクト報告

日西400周年東日本再生ビジョン展、「復興の狼煙 ポスタープロジェクト」のメッセージ翻訳

2013年6月12日から来年2014年7月まで、日西観光協会主催の東日本再生ビジョン「グラシアス・エスパーニャ, アニモ・ハポン展」がスペイン各都市を巡回しながら開催されます(https://www.facebook.com/400TV)。
APJEも、「グラシアス・エスパーニャ, アニモ・ハポン展」のうちのひとつである震災復興関連写真展「復興の狼煙 ポスタープロジェクト」に協力しました。APJEが担ったのは、翻訳作業。2013年3月から5月にかけて、「APJE翻訳プロジェクト」が立ち上がりました。
「APJE翻訳プロジェクト」へは、スペイン全国12の日本語教育機関が参加し、下記の先生方が協力されました。赤星通子(ムルシア大学 語学センター)、池田訓子(サラゴサ、個人授業)、大石恵(アルバセテ、個人授業)、大内真琴(マラガ、個人授業)、木村千枝子(マドリード・アウトノマ大学)、久保賢子(サラマンカ大学)、 品部直美(語学学校 Langeurop)、鈴木裕子(マドリード・コンプルテンセ大学 語学センター、マドリード・アウトノマ大学)、永井聖子(マドリッド補習授業校)、二宗美紀(バスク大学)、梅本朋子(語学学校 Barna House)、益子夏実(マドリッド・コンプルテンセ大学 語学センター) 、望月アツ子(語学学校 Costa del Sol)、 高橋水無子(サンティアゴ・デ・コンポステラ大学 語学センター)。また、チームリーダーを俵加奈子(語学学校 Barna House)と高橋水無子、翻訳文のネイティブ・ダブルチェックを Daniel Ruiz Martínez (サラマンカ大学) 、Francisco Barberan (サラゴサ大学) 、Nobuo Ignacio López Sako (グラナダ大学) が担当しました。
また、実際の翻訳の作業にあたったのは、200名以上の学生たち。各機関の先生方の指導の下、Webサイト「復興の狼煙 ポスタープロジェクト」(http://fukkou-noroshi.jp/)に掲載されているもののうち、47枚の写真ポスターにあるメッセージを日本語からスペイン語へ翻訳しました。

APJE翻訳プロジェクト」開始から翻訳文の提出の期限まではセマナ・サンタの連休を含んだため、本当に限られた日数の中で、学生たちも先生方も翻訳を完成させなければなりませんでした。最終提出となる翻訳文の選び方は各機関さまざまで、まず学生各自が翻訳文を作り、それをみんなで投票しあって一番良いと思われる翻訳文を選考したところもあれば、はじめから学生たちがグループ作業で一つの翻訳文を完成させていったところもありました。先生方からの感想としては、翻訳作業を通じて学生同士で話し合っているうちに日本語で会話するようになり、作業が良いきっかけとなったとのことです。また、翻訳するメッセージの中には被災者たちの怒りを伝えた、強い心情を表すものがあったのですが、学生たちは翻訳に悩み、スペインの若者たちのあいだでは日常的に口にされる俗語を翻訳文に使ってしまったエピソードもありました。今回の翻訳は写真展という公の場で使われるものであり、表現としての観点から、これが果たして適切な表現だろうかと翻訳文を見直すことになりました。翻訳作業を通じて、表現の自由と言いつつも、社会の中で公衆に向けて発信するために言葉を選ぶこと、いろいろな場面における表現の変化・適切さを考えるという経験にもなったようです。ネイティブ・ダブルチェックをしてくださった3人のプロの先生方からすれば、学生たちの翻訳は未熟なものと言えるかもしれません。ですが、今回の翻訳プロジェクトでは翻訳の完成度よりも、学生たちが写真とメッセージから感じ取って表現した言葉を大切にしました。

「復興の狼煙 ポスタープロジェクト」の写真に添えられているのは、2011年3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震の被災地からのメッセージであり、学生たちは、被災者たちの気持ちや復興に立ち上がる力強さを、どうやってスペイン語の文へ反映できるか悩み、翻訳の難しさを体験しました。今回の翻訳作業に取り組むことで「具体的にどのような形で被災者の方たちを援助することができるのか」という質問が出るなど、真剣に被災地や日本のことを思っている学生が多かったようです。一生懸命に取り組んだ翻訳の作業を終えた後の学生たちの感想は、「満足」の気持ちが表れたものが多く、日本がより身近になったとのことでした。

(サンティアゴ・デ・コンポステーラ、高橋水無子)