サラマンカ・シンポジウム 

—2017年6月基調講演—
テーマ 「成長する教師 ―実践研究のすすめ―」
    コミュニカ学院 学院長 奥田純子先生

スペイン教師会のシンポジウムが2年に一度という稀な機会であること、そして「成長する教師」という興味深いテーマに引き寄せられたのが参加の動機です。

教師の成長にとって不可欠な要素の一つに、実践の探究活動があるということでした。自分が目指すのは、どんな教師なのか、そうなるためには、何が必要かを追求するプロセスです。そして、その成果をまとめ、公表し、共有されることにより、個々が内省的に振り返ることができ、実践の改善からよい授業につながるということでした。

また、こう教えたいという教育する側だけでなく、学習者側にも気づきを生み、自律学習へとつなげることの重要性も確認しました。特に、日本語学習者の目的や状況が多様化している今、様々な面から授業の方法や内容を考えなければなりません。何をどうという実践的なことだけでなく、どんな仕組みかという科学的なこと、さらには何々とは何かといった哲学的なことも結び付けていかなければならないとのことでした。目的をはっきりさせ、「自分の思い込んでいることをちょっと変えてみる」という先生の言葉が深く残っています。まずは、そこから実践していきたいと思いました。

基調講演から離れますが、ラップアップセッションでセミナーの発表者のみなさんの言葉が印象に残っていますので、記させていただきます。「苦手だが」「やってみたらできた」「階段を上った気持ち」、成長を意味している言葉と受け取りました。みなさん、素晴らしかったです!

役員、実行委員のみなさま、どうもありがとうございました。

伊丹弘子(リスボン)

共有から生まれるネットワーク
成長する教師…みんなで育てば怖くない!

2010年の設立から7年目を迎えるAPJEの第4回シンポジウムは700年の伝統を誇るサラマンカ大学で行われました。

初日には奥田先生の基調講演でスペイン日本語教師会における学びと実践の共有、さらなるネットワークの形成とプロジェクトへの発展が提案されました。翌日は2箇所に分かれて合計9つの口頭発表、そして8のポスター発表があり、スペインやポルトガルで活躍する日本語教師による報告を実践者から直接聞き、質問をする機会に恵まれました。

この発表の場でも奥田先生からのサポートが続き、「日本語教師がともに成長するための実践の共有」という考え方をもとに「発表をどう聞き、どう質問するか」のヒントが得られました。また、質疑応答の後にも発表の内容や質問の仕方についてのコメントをいただき、初日の基調講演の内容を実際的な場面に当てはめて考える練習になりました。

口頭発表は2箇所で並行して行われたため全部の発表を聞くことは残念ながらできませんでしたが、どの発表からも構想・実践・反省に相当の時間・工夫・情熱が注がれたことが想像できました。また、アプローチの仕方は違っても、多くの発表に「自立学習を目指す」という興味深い共通点が見られました。「スペインで日本語を学ぶ」という、言語環境から離れた言語学習の場でこそ「教室での言語学習」「教師が生徒に教える」という定型を打ち破り、学習者が自律的に学び、日本語話者へと成長していく手助けをすることが必要なのだということを改めて認識させられました。

また、口頭発表とポスター発表という2つの方法で実践報告を聞くことができたのも大きな収穫でした。口頭発表では発表者が周到に準備した報告から実践の詳細まで知ることができ、ポスター発表では少人数のグループを形成してよりざっくばらんなコミュニケーションを通じて報告を聞くことができました。自分と同じような立場の日本語教師による研究・実践をライブで聞き、直接質問をして即回答が得られたことで実践の共有ができただけでなく、次は私もチャレンジしてみよう!という意欲が湧いたのは私だけではなかったと思います。また、いくつもの発表内容から今後の課題が提示され、共同プロジェクトへの発展の可能性が感じられました。2年後のシンポジウムが楽しみです。

古屋 まり子 (Castellón)