アリカンテ巡回セミナー 2018年6月報告

アリカンテ巡回セミナー
2018年6月9日(土)午前9時45分から午後2時まで
会場:アリカンテ大学シティーキャンパス (Universidad de Alicante, Sede Universitaria Ciudad de Alicante)
講師:JFMD日本語教育アドバイザー・篠崎摂子先生
主催:国際交流基金マドリード文化センター

 

この時期のアリカンテにしては珍しい曇り空の朝、アリカンテ大学シティーキャンパスにて、第8回アリカンテ巡回セミナーが行われました。今回は今年4月にJFMDの日本語教育アドバイザーに着任された篠崎摂子先生をお迎えし、「まるごと中級1」をテーマにご指導していただきました。

参加者は13名、近県ムルシア、カステジョンからも日本語教師が集まり、活気のあるセミナーとなりました。

お馴染みの教科書「まるごと」ですが、中級レベルはまだ使ったことがない、という参加者がほとんど、ということで、まずは「まるごと中級1」の特徴をつかむところからスタート。内容一覧を見て、どんなトピックが扱われているかを確認しました。「まるごと」A1―A2でも出てくるトピックが多く(自己紹介、食べ物、趣味、など)まだ話題は身近なことにとどまるものの、文法や表現は複雑になって、より詳しい説明ができることが求められているのが分かりました。

次に、トピック9「伝統的な祭り」をとりあげ、どんな構成、内容になっているのかをチェック。全体構成としては、「聞いてわかる」→「会話する」→「長く話す」→「読んでわかる」→「書く」の5パートで展開されており、各パートのはじめに、何ができるようになるのか、というCan-doが提示されています。

グループに分かれて各パートを分析すると、「これはCan-do達成に必要なストラテジーを習得するためのタスクだ」とか「ここではストラテジー使用に必要な文型や文法を学ぶのだ」というように、今何を勉強しているのかが分かりやすいタスク構成になっていることに気づかされました。

セミナーの中で篠崎先生が「人から説明されたことは頭に残らないが、自分で考え、気づいたことは理解につながる」とおっしゃっていたのが印象的ですが、こうしたグループワークをすることによって多くの気づきがあり、体験することの大切さを実感しました。

コーヒーブレイクを挟み、後半は「中級(B1)を教えるには?」というテーマで、参加者の中級レベルに対するイメージについて話し合いました。

「中級ではもっと難しいトピックを扱うイメージがあったが、案外身近で日常的なことを扱っていることが分かった。」「以前は出てきた語彙や表現を全部覚えさせなければならないと思っていたが、生徒各自が必要なことを取り込んでいけばよい、と分かった。」など、セミナーの前後で中級のイメージに変化があった、という声が多くありました。

「B1はまだサバイバルの要素も含む日常生活レベルである」こと、「文型を教えると同時に、ストラテジーを教えることが大事」、「生の日本語に触れて、全てが理解できなくても気にしない態度を養う」など、中級を教えるにあたっての心構えやヒントをたくさんいただき、ちょっと敷居が高いと思っていた中級レベルがぐっと身近に感じられるようになったセミナーでした。

セミナー後の懇親会ランチでは楽しいおしゃべりが止まらず、あっという間に時間が過ぎてしまいました。講師の篠崎先生、ムルシア、カステジョンからお越しくださった方々、準備に協力してくださったアリカンテの皆さん、ありがとうございました。

alicante seminario

福居薫