マドリッド巡回セミナー 2016年5月報告
「聴くことの指導を考える」
5月29日、マドリッドのCN Lagascaにおいて、JFマドリード日本語アドバイザーである近藤裕美子先生による巡回セミナーが行われました。テーマは「聴くことの指導を考える」ということで、教育機関で現場に立っている先生方、また日本語教育に関心のある方々、14名がセミナーに参加しました。
最初に「聴く」能力について理解を深めるために、JLPT認定の目安とCEFRを使って、「場面の設定」「素材(テクスト)」「音声的な特徴」「できること」の4点についてレベル別にキーワードをまとめました。すると、学習者が一つ上のレベルに到達するために必要なポイントが明確になり、これらのポイントを意識させながら聴かせると良いということが分かりました。
次に学習者に何をどう聞かせているかを各自で振り返ってみました。普段のクラスでは聴解用や読解用の教材、教科書、生素材等が使われていることが多く、聴いた後には内容に対応した絵や質問に対する答えを選択したり、キーワードを聞き取ったり、ディクテーションをしたりするという活動が考えられます。どんな活動をするにしても、大切なのは「生徒の○○の力を伸ばしたいから○○をする」というタスクの目的をはっきりさせることだということを改めて認識することができました。
また指導のポイントとして、特に「日本語の音声的特徴を教える」「推測しながら聴く」という2つのストラテジーが取り上げられ、これらをどのようにして現場で使ったらいいのか、グループワークで様々なアイディアが出され、皆で共有することができました。
さらに日本語を教えていく上で、時には聴解問題を作成しなければならないこともあります。ゼロから問題を作るのはハードルが高そうですが、既成の問題を少し変えることで簡単に自作の聴解問題を作るテクニックを教えて頂きました。
普段、とにかく学習者に日本語を聴かせ、全てを理解させなければと意気込みがちですが、今回聴く能力を高めるための様々なポイントが確認できたことで、頭がすっきりと整理されました。しかも今回のセミナーでは資料がパソコンのデータで配布され、セミナー中もワード、エクセル等を使用しながらグループワークが行われたので、作業のスピードが上がり効率的に学べたと思います。明日からのクラスに是非活かしたいと思えるセミナーでした。
(グラナダ、田寺先生)