ガリシア巡回セミナー 2018年10月報告

ガリシア巡回セミナー
2018 年10月20日(土)午後4時から8時まで
会場:サンティアゴデコンポステラー大学現代語学センター( Centro de Linguas Modernas de la Universidad de Santiago de Compostela)
講師:JFMD日本語教育アドバイザー・篠崎摂子先生
主催:国際交流基金マドリード文化センター

 

今回のセミナーのテーマは、「中級(B1)レベルの読解指導を考える」でした。このテーマで研修をお願いした背景には、初級(A1、A2)レベルで要求される読解の目標とB1で求められるそれが異なるということに気づいたことにあります。参加者の多くはこれまでA1、A2レベルの授業を担当してきましたが、年々B1やそれ以上のレベルを教える機会が増えて来ています。またEOIではCEFRレベル認定試験を実施しており、読解試験の作成を行っています。B1レベルを認定する読解試験では、どんなことを測る必要があるのか、どんなテクストを取り上げる必要があるのか、など教師の間で疑問が生じていました。そこで、篠崎先生にご相談し、このテーマで研修をしていただくことになりました。

 

今回のセミナーでは、①中級レベルの読解の特徴を理解する ②試験で測る読解能力を理解する ③読解能力を養成するための教え方を考える、を目標として進めていただきました。

 

まず、読解をどのように指導しているか、読解を教えるときに何が難しいのか、などを話し合い、読解に関する基礎知識を再認識いたしました。そして中級(B1)とはどのレベルなのかを参加者全員が共通認識した後、二つのグループに分かれて、JLPT の3級の読解問題の抜粋とEOIガリシアのCEFR認定試験B1の読解問題を分析しました。この作業では、各問題でどんなことを問うているのか、例えば、テクスト全体の理解を求めているタスクなのか、情報スキャニングを求めているタスクなのかなどを分析していきました。

 

次に先生が用意してくださった『まるごと 日本のことばと文化』B1のテキストの中の「読んでわかる」のパートを各自が分析する作業を行いました。①読む前にどんな活動を行うか ②各タスクはどんなことを求めているか ③読むためのストラテジーは何か ④読解の後にどんな活動を行うかなどについて、各自が担当したページを分析していきました。この作業を通して、読解授業の活動の仕方を学ぶことができました。また、イラストの並べ替え、表に解答を埋め込むなど読解タスクの解答方法には様々な形式があることを認識いたしました。

 

最後に、あるテクストを用いて授業活動案を考えるグループ、そのテクストで試験問題を作成するグループに分かれそれぞれが作業を行いました。

 

今回のセミナーでは多くの時間がワークショップに費やされ、ほとんどのワークが一人で作業を行うことになりました。参加者が個人教授を行っている人、教師経験ゼロの日本人留学生、EOIや大学語学センターで教えている人など、参加者の背景や各自のニーズが異なりましたので、個人作業はとても有効的だったと思います。各自それぞれのスタンスで学ぶことができました。個人的にはこのワークに参加し、試験と読解授業の違いを実感いたしました。読解試験を作成するときには、様々な制約がありますが、読解の授業はその制約がなく、もっと自由に行えるということを体験しました。今回もとても充実したセミナーでした。講師の篠崎先生、ありがとうございました。

野崎美香