2020年秋APJE定例研修会 報告
日時:2020年11月8日(日)午前10時30分から午後14時まで
会場:オンライン
講師:ロペス・サコ・ノブオ・イグナシオ先生(グラナダ大学)
主催:APJE
テーマ:「第二言語習得研究の理論に基づいた学習 ~ P(C)PPメソッドに挑戦!」
2020年11月8日日曜日、グラナダ大学のロペス・サコ・ノブオ・イグナシオ先生を講師にお迎えし、APJE第30回定例研修会「第二言語習得研究の理論に基づいた学習 ~ P(C)PPメソッドに挑戦!」がオンラインで行われました。
研修の前半ではP(C)PPメソッドの紹介と、イグナシオ先生が教えられているグラナダ大学で『みんなの日本語』を使った初級のクラスでのP(C)PPの実践例を見ました。後半では、小さいグループに分かれて、P(C)PPメソッドを取り入れたやりとりのレッスンを『みんなの日本語』を使ってデザインする練習をしました。
イグナシオ先生によると、P(C)PPとは、初級と初中級の外国語学習に適したメソッドで、1970年代にアウトプットを重視するオーディオリンガルメソッドの代替として生まれた教授法だそうです。このメソッドでは、「言葉を産出する(アウトプットする)にはまずインプットが必要である」という第二言語習得研究理論に基づき、P→(C)→P→Pの流れで授業を進めていきます。①P=Presentation(提示)では、このレッスンで学ぶ表現、語彙、文法事項が紹介されます。②C=Comprehension (理解)では、より詳細な内容について講師とのロールプレイなどを通じて理解を深めます。③P=Practice(練習)では、頭で理解するだけではなく、自分の言葉として実際に口から出せるようになるように練習します。④P=Production(産出)では、実際のシチュエーションを想定した状況でのチャレンジを行います。このような流れで授業を行うと、学習者は学習項目への理解を深めてから、学習項目の口頭練習や、その後の口頭コミュニケーション活動の練習をより効果的に行うことができるようになるそうです。
イグナシオ先生がおっしゃっていたP(C)PPメソッドの魅力を二つご紹介します。
①第二言語習得研究理論に基づき「インプットからアウトプット」の順番で学習ができる。
②「コミュニケーションを重視した学習」に利用できる(課題遂行型学習でも導入できる。目標Can-doが利用できる。コミュニカティブな活動ができる)。
私がこの研修で学び、考えたことを二つ挙げます。
①一つ一つの学習活動には必ず目的がある。何の目的で、今このタイミングでこの学習活動をしているのかということを授業全体の流れの中で考えながら、教師は授業準備をしたり、実際の授業を行なったりするのが大切。また、授業時間内においては、学習目的を学習者にわかりやすく見せることで、学習項目に対する理解もより深まる。
②学習者が新しく学んだ日本語を自分の言葉として口に出したり、学びの中での気づきを促したりできるような「仕掛け」(質問、絵カード、口頭コミュニケーション活動など。)を教師は準備の段階でよく考えておくのは大切な仕事。教材をどう料理したら、その仕掛けがうまくいくのかもよく考える必要がある。それぞれの学習者やクラスに合った「仕掛け」を考えるために、日々、教師は一人一人の学習者やそれぞれのクラスの雰囲気などをよく見て知っておくことも大切。
イグナシオ先生、スペイン日本語教師会の運営委員の皆様、この研修でご一緒させていただいたスペインとヨーロッパ各地の先生方、大変貴重な学びの時間をありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。
高塚直子(バルセロナ)